2021.03.26
建物診断 大規模修繕 

マンションの建物診断はなぜ必要?診断内容を解説

建物調査診断はなぜ必要?診断内容を解説

多くのマンションでは、10~15年おきに大規模修繕工事を実施します。その際、事前に行われるのが「建物診断」です。本稿では、マンションになぜ建物診断が必要なのか、診断内容などを踏まえて解説します。

マンションの建物診断とは

建物診断(または建物調査診断)とは建物の状態を把握するために行われる調査で、調査員が目視や触診、機械調査で劣化の状態を細かく確認していきます。また、大規模修繕工事の準備の一環として建物診断を実施するマンションも多いため、工事前に管理会社から提案を受けて実施するケースも多いようです。その他、建築事務所、施工会社などを通じて行う場合もあります。

建物診断を行う主な4つの目的

マンションの建物診断とは

それでは、なぜ大規模修繕工事の前に建物診断が必要なのでしょうか。
建物診断の主な目的を4つにまとめました。

1.大規模修繕工事の実施時期の検討

大規模修繕工事の周期は一般的に10~15年といわれていますが、必ずしもこの期間に実施しなくてはいけないということではありません。極端な話、まったく傷みがなければ補修の必要はないわけです。しかし現実には雨、風や日差し、湿度などの影響を受け、建物の劣化は進んでいきます。また、海のそばや降雪量の多い地域といった立地の違い、日々の建物利用状況よっても、建物に傷みが生じる箇所や進度は変わってきます。例え同じ形の建物であっても、建物の状態はそれぞれ異なりますので、修繕工事の計画は個々の建物に合わせて考えていく必要があります。また、実際には建物診断によってわかった建物の状態に加え、資金面、保証の期間など様々なソフト面も考慮して大規模修繕工事の実施時期を決めていきます。

2.建物の劣化・不具合状況の把握

マンションの大規模修繕工事では外壁、屋上、バルコニー、廊下やエントランス、外構、設備関係など共用部を中心に、建物全体が修繕の対象となります。

明らかに破損、故障しているのならまだしも、例えばタイルが下地から浮いているといった症状は外観からは一切わかりません。こうした不具合はタイルが剥落する可能性もありますので、そのままにしておくのはとても危険です。建物診断では、専門家の目視調査や機械調査で建物に現れる様々な変化から、劣化症状の状態、範囲などを調べていきます。

3.およそかかる工事費用の算出

大規模修繕工事の資金には、組合員によって毎月積み立てられる「修繕積立金」が充てられます。そして、工事内容は、建物診断でわかった建物の状況を反映して組み立てられます。修繕積立金の範囲内で収まればそのまま実施が可能ですが、足りない場合には工事費用の見直しや一時金の徴収、借り入れの検討などが必要になります。

また、修繕積立金の範囲に収まったとしても、工事の内容はしっかり吟味しましょう。なぜならば、修繕積立金は今回の工事だけではなく、10年先、20年先に実施される予定の大規模修繕工事の資金でもあるからです。特に築30年目以降に実施される大規模修繕では、様々な設備が寿命を迎え建物の大幅な機能改良が必要になってきます。将来のことも視野に入れ、資金は計画的に使いましょう。

4.長期修繕計画の見直し

大規模修繕に限らず日常の管理など、マンションを維持していくためには多額の資金が必要になります。そのためにマンションごとに長期修繕計画を準備して維持管理に必要な費用を算出し、組合員は「管理費」や「修繕積立金」として毎月積み立てているわけです。しかし、この長期修繕計画は1回作成をしたらずっと使い続けられるというものではありません。あくまで計画ですので、年月が経ては実態とのずれも生じてきます。建物診断の実施や大規模修繕工事の計画をするタイミングは、長期修繕計画を見直す絶好の機会です。修繕積立金をはじめとする収支についても検証し、管理組合内で将来の備えについてもしっかり協議し準備をしていきましょう。

建物診断の流れと内容

建物診断の流れ

大規模修繕工事において、建物診断は建物の状況を正確に把握するのに大切なプロセスです。では、具体的にどのような内容で進められるのでしょうか。

1. 打合せを実施

建物の状況について確認し、建物診断の内容やプラン、費用について説明を受けます。

2. 竣工図書など書類の確認

建物診断を実施する前に竣工図書(図面)や過去の修繕や点検に関する書類を確認し、建物の構造や付属する設備、使用状況などについて現状を把握・整理します。

3. 居住者にアンケート

バルコニーの状態や漏水の有無、使いづらい点など、主に生活をしている中で気づいた不具合や要望について意見を集め、現状を把握します。

4.目視・打診による調査

事前の書類確認やアンケート結果で建物や劣化状況の特徴を踏まえ、実際の調査に入ります。当日は、外壁や屋上、廊下や階段、手すりなど共用部を中心に調査を行います。また、バルコニー調査の際は、調査員が居室内を通る場合がありますので、バルコニー調査はあるのか、また実施を希望するかどうかも含め、調査会社からの案内を確認してください。

マンションの建物診断では主に目視・打診調査、機械調査などが実施されます。目視・打診調査では、調査員が目視での確認と合わせ、打診棒という器具を用いて調査を行います。これは対象物をコツコツと叩き、返ってくる音で内部の状態を判断する調査です。また、機械調査では特殊な機械や薬品を用い、コンクリートの品質や劣化の状況、外壁のタイルや塗膜が十分な強度で下地に密着しているかといった項目をチェックします。

5.建物の調査報告書の提出

建物診断の実施後は、調査の内容をもとに「建物調査診断報告書」が作成されます。図面や写真などを用い建物のどこに劣化や不具合があるのかが記載されているので、修繕箇所をひと目で把握できるでしょう。また、調査員の所見などは工事内容を計画する際にぜひ役立てましょう。

6.調査報告会の開催

建物診断が終わったら、組合員らに向けて「調査報告会」が開催される場合もあります。

報告会では実際に建物診断を行った業者や、理事会役員らから建物診断の結果をもとに建物の現状について詳しく説明があります。一緒に大規模修繕工事や今後の建物の維持管理の方針についても説明が及ぶかもしれません。これは組合員に現状を正しく認識してもらい、建物を維持管理していくための方向性について理解と賛同を促すためです。管理組合内での広報を行い、多くの方に参加をしていただけるよう働きかけましょう。

建物診断にかかる費用と期間

次は建物診断にかかる費用や期間について解説していきます。

無料診断と有料診断の違い

建物診断は基本的に有償で実施されますが、中には無料診断を実施している会社もあります。

無料診断とはその名の通り「無料」で診断を受けられるもので、簡易的ながらも目視や触診、打診による診断が実施されるため、ある程度の劣化や不具合の把握が可能です。しかし、あくまで無料なので、コンクリートの内部まで詳細に調査するような項目は入っていない場合もあります。知りたい内容がきちんと網羅されているのかは事前に確認が必要です。

対して、有料診断は「有料」で診断を依頼するものだけに、目視や打診調査以外にも、機器を用いた測定など、より詳細に建物の現状を知ることができます。大規模修繕工事の実施時期の判断や建物の余命が知りたいなど、大きな資金が動いたり、建物の寿命に関わるような判断が必要な場合は、有償でも建物の状態がきちんとわかる内容の調査を実施していただくことをお勧めします。実際にどれくらいの費用がかかるのかは、建物の規模や形状等によっても変わってきますので、見積りを取り、予算と照らし合わせて信頼できる業者を選びましょう。

建物診断にかかる期間

建物診断を実施することが決まったら、業者に希望時期を伝え調査日程の調整を行います。また、図面など必要な書類について借用を求められた場合は、打ち合わせまでに準備を進めましょう。その後、アンケートの集計やバルコニー調査の日程調整など事前準備が必要になりますので、ある程度余裕をもって依頼することが大切です。

実際にマンションで調査を実施する期間は、建物の規模にもよりますが50~100戸位のマンションであれば1~2日程度、その後、報告書の提出までに約1月程度は見ておく必要があります。建物が複数棟ある場合は、調査期間や報告書の準備ももう少し時間を要するとお考えください。

大規模修繕工事の際は建物診断を行おう

本稿では、マンションの建物診断とはどのようなものなのか、その目的や内容についてまとめました。

建物診断を実施しなかったからといって、建物にすぐに影響がでるということではありません。しかし、大規模修繕工事の際には、まず建物の状態を正確に知ることで、現状に即した実施時期の判断や有効性の高い補修内容を組むことが可能になります。また、劣化の程度に応じてすぐに補修が必要な個所と状態の良い箇所を知ることで予算を効果的に分配することができ、無駄な工事も減らすことにもつながります。建物は我々にとって生活の基盤となる大切な資産です。長く安心して使い続けられるようきちんとメンテナンスを行い、しっかり守っていきましょう。

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