2021.07.28(最終更新日:2021.11.09)
大規模修繕 

マンションの大規模修繕工事でのトラブルや対応策を解説

マンションの大規模修繕工事でのトラブルと対策を解説

一般的に10~15年の周期で実施されるマンションの大規模修繕工事。新築工事と違い、多くの人が生活している中での工事になりますので、日々の暮らしに極力影響を及ぼさないための配慮が必要です。また、日常の生活の場で工事を行うことになりますので、安全面においてもしっかりとした対策を行いましょう。今回はマンションの大規模修繕で発生する可能性があるトラブルや対応策について、修繕の準備段階、施工中、施工後の3つの段階に分けて解説します。

マンションの大規模修繕工事とは

マンションの大規模修繕とは、長期的な計画に基づいて実施される補修工事のことで、修繕の対象となるのは外壁や屋上、廊下、バルコニーなどの共有部分です。大規模修繕工事には建物の劣化を防止し、安全・快適に生活できる環境を整えると同時に、建物の資産価値を守る役割もあります。

賃貸マンションであれば大規模修繕を主導するのは物件のオーナーです。一方で分譲マンションの場合は、マンション各部屋の所有者=区分所有者からなる管理組合が中心となって大規模修繕工事の計画立案や費用の管理を行います。管理組合の中でも中心的役割を担うのは理事会や修繕委員会のメンバーになりますが、住んでいる方々の協力なしには工事は実施できません。管理会社やコンサルタント、施工会社とも連携し、大規模修繕工事をスムーズに進めていけるようマンション内の体制をしっかり整えましょう。

大規模修繕の準備段階で注意するべきトラブル

初めに大規模修繕の準備段階で注意するべきトラブルについて解説します。

1. 修繕積立金の不足

大規模修繕工事の費用は、区分所有者が毎月納める修繕積立金から捻出します。そして、この修繕積立金の額は、各管理組合で作成している長期修繕計画に基づいて算出されています。長期修繕計画は向こう25~30年の修繕計画や収支などがまとめられた計画書で、いつのタイミングでどのような修繕工事が必要になるのか、そのためにはどれ位の費用がかかり、積立の状況はどうなのかが細かく記載されています。しかし、この長期修繕計画内で設定されている工事費用が安く見積もられていたり、そもそも必要な工事が計画に組み込まれていないなど内容が現実に則していない場合、大規模修繕工事の準備をスタートして初めて資金が足りないことがわったというケースも出てきます。こうした事態に陥らないよう長期修繕計画は定期的に見直し、収支の状況を管理することはとても大切です。

一方で、実際に準備が始まった後で大規模修繕工事費用に対し積立金の不足がわかってしまった場合、以下のような対応策を含め検討が必要です。

● 工事内容を見直し、費用を抑える
● 工事の時期を見直す
● 区分所有者(組合員)から一時金として追加徴収する
● 融資を受ける

まず検討すべきは、工事内容の見直しです。劣化の状態から補修の緊急度を考慮し、必要性の高い工事を優先的に計画に組み込みます。状態の良い箇所は、次回の大規模修繕工事まで持たせる処置に留めたり、資金が貯まり次第、大規模修繕工事とは別の時期に切り分けて工事を実施したり、内容の精査を行いましょう。場合によっては、大規模修繕工事の時期自体を少し先に延ばし、積立金が貯まるのを待つという考え方もあります。また、管理組合内での議論や意見調整は必要ですが、一時金の徴収や融資を受けるといった選択肢もあります。ただし、いずれも修繕積立金が足りていないことに対しての根本的な解決策ではありません。将来に向け、修繕積立金の改定を含めた長期修繕計画の見直しを早めに実施していただくことをお勧めします。

2. 管理組合内の意見がまとまらない

大規模修繕工事の際には、多くの場合、理事会や修繕委員会が管理組合の代表として工事を主導します。その際、大切になるのが組合員の皆さんに向けた広報活動の徹底です。パートナーや施工業者の選定、工事項目の検討など、大規模修繕工事の準備が始まると、様々な検討事項があがってきます。方向性の決定に際し、組合員に向けた説明会を開催し、途中経過や経緯の説明、意見聴取など広報活動を重ねましょう。特に大規模修繕工事では大きなお金が動きますので、一部の方の意見が強く反映されたり、そのように見えてしまうことは不満が生まれる原因にもなります。工事をスムーズに運ぶためには、公平性や透明性を保ち、管理組合全体で方向性を共有できることがとても大切です。


大規模修繕の施工中に注意するべきトラブル

続いてマンションの大規模修繕施工中に注意するべきトラブルについて解説します。

大規模修繕の施工中に注意するべきトラブル

1. 工事の音、振動、臭い、ほこりなど

大規模修繕工事が始まると建物の周りに足場が建ち、多くの工事車両や作業員が出入りします。また、実際に補修作業を行う際には、どうしても機械音やコンクリートを削る音、振動やほこり、また塗料の臭いなどが発生したり、工事の内容によってはバルコニーに出られない日、洗濯物を外に干すのをご遠慮いただく日なども出てきます。作業員も生活への影響が最小限で済むよう細心の注意を払って施工にあたりますが、居住者の皆様のご理解・ご協力は欠かせません。

同時に生活への影響は住んでいる方にとって非常に関心の高い項目でもありますので、工事前に行われる説明会でも丁寧に説明し、理解を促しましょう。質問や疑問点などが出てきた場合には、施工会社とも対応策を協議し、居住者が不安に感じることのないよう事前に懸念点を解消しておくことも大切です。実際の工事に入ると、施工会社側でもエントランスなどに設置される掲示板での案内や各住戸へのチラシを投函など事前のご案内を徹底すると思いますが、万一、居住者の方からご意見をいただいた場合は、速やかに施工会社とも対応策を協議し、解決に努めましょう。

2. 近隣にお住まいの方への対応

マンション大規模修繕のような大掛かりな工事は、近隣にお住まいの方とっても大きな関心事です。数か月に渡る工事期間中、日によっては生活道路に工事車両が止まって通りづらくなったり、また、工事の音や臭いにストレスを感じる方が出てくるかもしれません。工事が始まる前には、できれば管理組合の役員も同行し、管理会社や施工会社の担当者と一緒に近隣にお住いの方々へのご挨拶にうかがいましょう。また、工事が始まってからも大きな音が出る工事が始まる前や工事車両が道路に停まる場合など生活への影響が考えられる場合は、必ず事前にご説明にうかがいましょう。

大規模修繕工事はマンションにお住まいの方のための工事ですが、その間、近隣の方々も数か月にわたり、色々と我慢をお願いすることになります。ご迷惑をお掛けしてしまうことに変わりはありませんが、それでも事前に挨拶があったのと無かったのでは、その心証は大きく変わってきます。近隣への影響まで目を配り、対処に努める姿勢は、大規模修繕後もマンションが地域の皆様と円満に関係性を築いていくためのとても大切な配慮です。必ず真摯に対応しましょう。

3. 防犯対策は念入りに

工事期間中は多くの人が出入りをします。作業員は腕章やベストなどを着用し、外部の方とは判別できるようにしている場合がほとんどですが、不審者にはいつも以上に注意し、玄関や窓の施錠は怠らないようにしましょう。

また、工事期間中は建物周囲、つまりバルコニー側にも足場が建ちます。万が一にも外部の方が足場内へ立ち入ることのないよう施工会社側でも細心の注意を払い対策を講じていますが、バルコニー側の窓の施錠もいつも以上に気を付けましょう。施工会社から補助鍵が配布される場合もありますので、こうした防犯グッズも上手に活用しましょう。

4. 危険な場所には近づかない

工事現場には様々な機材、重量のある資材や塗料など、管理や使用方法を誤ると危険なものがたくさんあります。作業員が施工している場所はもちろん、立入禁止の看板やテープ、カラーコーンなどで区画されている場所には絶対に入らないようにしましょう。特にお子様にとっては、普段目にすることのない足場や大型車両など珍しいものばかりですので、好奇心から近づいてしまうケースがあります。お子様への注意喚起の一環として、管理組合によっては、施工会社と一緒にお子様向けの工事説明会を開催する場合もあります。工事の模擬体験などを通じ、なぜ工事が必要なのか、どんな工事を行うのかを学ぶと同時に、工事現場での危険ややってはいけないことを一緒に確認します。また、ご家庭で工事現場での危険について、お話をしていただくこともとても有効な予防策になります。

大人の方でも工事中のマンション内で行動する際は、いつも以上に気を付けましょう。また、組合検査などで現場に入る場合は、必ず施工会社の指示に従って必要な保護具を身につけ、行動するようにお願いいたします。

5.予期せぬ追加工事の発生

大規模修繕の工事項目の中には、地上からでは確認しづらい外壁のひび割れやタイルの浮きなど、工事が始まり足場が建たないと劣化の状況を直接確認できない箇所もあります。こうした場所は事前の見積り段階で、一定の範囲内の故障個所を元に全体の数量を割り出し、おおよその費用を算出します。そして、足場が掛かった段階で改めて全体の故障個所を確認し、実際の数量を確定させる「実数精算」という方法を採用するケースが多くあります。そのため、当初の予定より金額の増減・減額が生じる場合があります。

ただし、こうした工事項目とは別に、着工後に思いがけない不具合や大きな故障が立て続けに見つかり、追加工事が次々と必要になったり、仕様が大幅に変更されたりといった状況は望ましくありません。こうした事態を避けるためにも、大規模修繕工事の前にはきちんと建物診断を行いましょう。計画の段階で、現在の建物の状態を踏まえ、適切な補修と機能向上が図れるよう資金面とのバランスも考えながら工事の内容を組み立てていくことが大切です。


大規模修繕の施工後に発生するトラブル

最後に、大規模修繕の施工完了後に発生するトラブルについて解説します。

1. 仕上がりが思っていたのと違う

事前に材料のサンプルが手に入る場合はぜひ確認しましょう。サンプルは蛍光灯の下だけで見るのではなく、屋外の日当たりや日陰など実際の使用環境で確認するとより近しいイメージで確認できます。
また、工事が始まる前に本番と同じ材料や工法で部分的に「試験施工」を行う場合もあります。塗料など、そのままでは実際の色味や質感まではわかりませんので、部分的に施工をして工法の確認と同時に、色合いや仕上がりの状態を確認します。

また、外壁にタイルを使用しているマンションでは、補修の際に部分的にタイルの張替えが必要な個所が出てきます。その際、市販品で対応するか、マンションのタイルを採取し色や質感を似せた近似タイルを新たに作ることになります。仕上がり時の色むらを極力避けるためには近似タイルを作っていただくことをおすすめします。施工前にサンプルを作成し、色、柄、質感、目地の色などを現状のタイルとよく比較検討しましょう。

2.症状の再発

工事の仕上がりは建物の耐久性や資産価値にも影響します。竣工時、見た目はとてもきれいに出来上がっていたとしても、劣化部分の補修が適切に行われていないと症状がすぐに再発し、結果として余分な費用や手間がかかるといったことにもなりかねません。施工会社を選ぶ際は、どうしても工事費用に重きが置かれがちですが、同時にこれまでの施工実績なども参考に、建物改修における経験値、工事への意気込みといった質の部分もしっかり見て判断することが大切です。

また、大規模修繕工事後には、保証年数に応じ施工会社のアフター点検が実施されます。そのため、施工会社とは工事が終わった後もお付き合いが長く続いていきます。施工会社を選ぶ際には、工事中はもちろん、工事が終わった後も建物のことを安心して任せられる会社を、財務面など経営の安定性も含め様々な角度から検討して選びましょう。

スムーズに大規模修繕を実施するために

マンションの大規模修繕でのトラブルや対応策を施工前、施工中、施工後に分けて紹介してきました。例え万全の準備をしていても、工事が始まると想定しなかった事柄が発生することもあります。そうした場合、まずは慌てずに施工会社など工事の窓口となっている人に相談しましょう。進捗状況や仕様に関する確認、住人の皆様の気づきやご意見など、関係する業者とは綿密にコミュニケーションをとりながら工事を進めていくことが大切です。全体の流れがスムーズに運ぶよう、より良い協力関係を築きましょう。

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