- 最終更新日:2024.08.02
- 大規模修繕
マンション大規模修繕の費用はいくら?工事費用のポイントを解説
マンションの資産価値の維持や、快適な生活の継続のためには、12~15年位の周期を目安に大規模修繕を実施することが適切とされています。そこで本記事では、大規模修繕工事の費用について解説していきます。
Contents
大規模修繕工事に掛かる費用の目安や相場は?
当たり前のことですが、マンションはそれぞれで大きさや造りが違います。例え同じ大きさ、同じ造りでも築年数や立地、使用状況で劣化の現れ方や修繕が必要な箇所は変わってきます。また、建物によって付属している施設や設備も違いますし、特別な材料が使用されていたり、構造的な弱点が原因で思いがけない故障が見つかったりする場合もあります。つまり築年数や規模だけで、大規模修繕工事の費用を考えるのは非常に難しいとお考えください。
おおまかな目安として、戸あたり130~150万円とも言われますが、これはあくまでも目安であり、工事の内容や資金の準備状況によっても大きく変わってきます。大規模修繕工事は各マンションの状況に応じて、内容をカスタマイズして実施する工事になります。
大規模修繕工事の費用を抑えるには?
大規模修繕工事は大きな金額が動きますので、費用を抑える視点は欠かせません。しかし同時に、大切なマンションを長く安全に使っていくための工事でもありますので、安かろう悪かろうで良いはずがありません。「質の高い工事」を「適正な価格」で実施することが大切です。ここでは、費用に関わるポイントについて解説していきます。
信頼できるパートナーの選定
大規模修繕工事は専門的な内容も多く、管理組合の皆様で全てを判断するのは難しい場合もあります。そんな時、専門家の視点で管理組合をサポートをしてくれるのが管理会社、設計事務所などのコンサルタント、施工会社などパートナー(専門家)の存在です。大規模修繕工事の第一歩はこのパートナーをどこにするのか決定することから始まります。パートナーは準備の初期段階から完工まで管理組合の皆様と一緒に、計画の中心に近い立場で工事を進めていく存在となり、工事仕様の設計や見積の取得、施工会社の選定など全体の費用決定にも大きくかかわってきます。
建物診断で現状を知る
大規模修繕工事を実施する前には、建物の調査が行われます。無料で診断してもらえる簡易的なものもありますが、基本的にはこの診断内容を元に建物の状態を判断し、工事内容が決定、見積に反映されるとお考えください。工事の内容を有効性の高いものにするためのスタートは、建物の状態を正確に知ることです。適切な内容が工事仕様や見積りに反映できるよう、きちんと診断を行いましょう。
工事の品質や会社の安定性
大規模修繕工事の施工会社を決定する際、多くの場合は複数社から見積りをとり、1社を決定することになります。その際、費用は非常に重要な判断材料のひとつですが、同時にこれまでの施工実績や経験、工事への意気込みといった質の部分、また財務状況など経営の安定性もしっかり見て総合的に判断することが大切です。工事の仕上がりは建物の耐久性や資産価値にも影響します。補修が適切に行われていないと劣化症状がすぐに再発し、結果として余分な費用や手間がかかるといったことにもなりかねません。また、施工会社とは工事中はもちろん、施工後もアフター点検などを通じて長年にわたる付き合いが始まります。建物のことを安心して任せられる施工会社を、様々な角度から検討して選びましょう。
工事内容の見直し
見積金額が予算を上回ってしまっている場合には、工事内容の見直しも有効です。その際、建物の維持や寿命、安全にかかわるような箇所から優先して内容に組み込んでいくようにします。緊急性が低い箇所は、次回の大規模修繕工事まで維持できる対策を実施するにとどめる。または積立金が貯まり次第、別途工事実施するという方法もあります。ただし、外壁の補修やシーリング工事、バルコニーの防水工事など、足場が必要な工事は大規模修繕工事の際に実施しましょう。その方が経済的です。
手遅れにならないタイミングで直す
大規模修繕工事の周期は一般的に12~15年位と言われています。なぜなら建物を保護している塗料や防水材などが寿命を迎え、その効果を十分に発揮できなくなってくるためです。ひび割れから雨水などが侵入すると、徐々にコンクリートやその中の鉄筋を傷め、やがて寿命に関わる深刻なダメージを引き起こします。ダメージが深刻になれば、直さなくてはいけない範囲も広がり、工事にかかる費用や期間にも影響してみます。そのため、前回の大規模修繕工事が終わって10年を過ぎたあたりで次の大規模修繕工事に向けて検討を始めるマンションが多いようです。準備の一環として建物診断を実施し、状態を確認します。状態が良ければすぐに工事をする必要はないかもしれませんが、劣化が深刻にならないうちに補修ができるよう、専門家のアドバイスも受けながら次回の大規模修繕工事のタイミングを検討しましょう。
高機能材料の採用
手遅れにならないタイミングで定期的に建物をメンテナンスしていくことはとても大切ですが、大規模修繕工事の間隔を短くし、頻繁に手を入れることが正解というわけではありません。なぜなら、大規模修繕工事を1回実施するためには、数千万円~億を超える費用が必要だからです。大規模修繕工事の回数を増やすということは、それだけ準備が必要な積立金の額も増えていきます。近年では大規模修繕工事の際に高耐久性・防汚性に優れた製品を採用し、次回までの間隔を長くして、トータルの費用を抑える工夫をするマンションも増えています。
ただし、建物の状態によっては間隔を長くすることで、状態が悪くなってしまう場合もあります。高機能材料の採用を含む、工事仕様を検討する際は必ず専門家のアドバイスを仰ぎましょう。
工事の精査と日常の管理が大切
大規模修繕工事は10数年に1度のイベントですが、劣化の表れ方や工事の内容には、立地や建物の構造などの要因に加え、日頃の建物の使われ方や管理の状態、また、実施計画には修繕積立金をはじめとする資金面など様々な要素が絡んできます。工事そのもので費用を抑える工夫をすることに加え、大きな故障につながらないよう目を配り、不具合があった場合は早めに対処する、建物をきれいに使えるよう管理組合内で声を掛け合う工夫をする、長期修繕計画を定期的に見直すなど、管理組合の皆様が日頃から積極的に建物の維持管理に関心を向けていただくことがとても大切です。
大規模修繕費用についてよくある質問
- 大規模修繕工事をしないとどうなるの?
- 大規模修繕工事を実施しなかったからといって、建物がすぐに使えなくなるということではありません。ただし、どんなに頑丈に造られた建物でも経年劣化は確実に進んでいきますので、例え小さなひび割れでも放置していれば、いずれ取り返しのつかないダメージに繋がる場合もあります。安全面、そして資産価値という側面からも、建物の状況に応じ、適切なタイミングで修繕を行っていただくことをおすすめします。
- 1回目よりも2回目・3回目のほうが高いって本当?
- 一般的には1回目より2回目の方が高額になると言われていますが、必ずしもそうとは限りません。劣化の現れ方や設備の入れ替えの有無など工事内容にもよりますが、1回目と同等程度または抑えた費用で実施できたというケースもあります。
ただし、築30年あるいは40年を超える3回目に関しては、建物本体の劣化が深刻化しているケースも多く、建物全体の機能回復に加え、給排水管やサッシなども更新時期を迎えます。また、バリアフリー化や防犯設備など時代に即した機能面の改良なども検討事項に上がってくるため、この時期の大規模修繕工事は建物にとっても大きな節目といえます。費用に関しても1回目、2回目よりは高額になる傾向があります。皆様のマンションではいつ、どんなタイミングでどんな工事が予定されているのか、工事項目や費用の見込みは長期修繕計画に記載されています。定期的に見直しを行い、資金もしっかり準備していきましょう。
- 追加費用がかかるのはどういうケース?
- 大規模修繕工事の場合、事前の建物診断で故障範囲をある程度想定し、必要な施工範囲を見積り、費用を算出します。しかし、高所の外壁のひび割れやタイルの浮きなど、実際に足場が掛からないと状態がわからない箇所や工事が始まって初めてわかる不具合も出てきます。そのため、当初の想定よりも故障個所が多くなると、追加費用が発生する場合があります。また、逆に想定よりも少ない場合には減額となります。追加で工事が必要な個所が発生した場合は、予め理事会や修繕委員会の皆様にご報告をし、管理組合の承諾を得た上で施工をします。
- 費用が足りない場合はどうすれば良い?
- 大規模修繕工事の資金には修繕積立金が充てられますが、積立金が不足している場合、まずは工事内容の見直しを行いましょう。それでも足りない場合は、一時金の徴収、融資を受ける、または工事の時期自体を見直すといった対応策を検討する必要があります。同時に、修繕積立金は将来的に予定されている工事のための費用でもありますので、目の前の工事に留まらず、将来的な視点も必要です。今後20~30年にわたる収支の状況は長期修繕計画で確認ができます。将来的にも積立金の不足が予見される場合には、計画内容や積立金額の見直しなどの対策も踏まえ、考えていきましょう。